2009年11月28日土曜日

手段に過ぎない


(伊豆に行ったよ。海がこんなにきれいだとは思わなかった)



分業について。

サークルをやっていたころから考えていたことだけれど、分業は難しい。

つまり、分業をすると自分の担当の仕事を目的だと思ってしまう人が出てくるのだ。

だからしばしばアウトプットがわけ分かんない複合体になってしまう。

担当者は自分の仕事を成し遂げたことで満足感は得られるのだけれど、それらを全体で見た時、全然失敗じゃんかーみたいになることがある。

本当はそれぞれの仕事(企画、渉外、営業、宣伝とか)というのは、チームにとっての手段に過ぎない。

そこで上位概念を共有することが大事になるわけだけど、「コンセプトでは食えない」的な反論に苦労することになる。

まあ早道はそれぞれの人が「これは手段なんだ」と自覚的にやっていくことなんだろうなあ、でもそんなこと不可能だよなあ、とか漠と思うけど、(よく分からない)。

2009年11月27日金曜日

事業仕分け



まあスパコンの仕分けに対して批判が多いが、意義を説明できない文科省も悪い。

「1位を目指す必要があるのか。2位ではダメなのか」というレンホー大先生の言葉に「唖然」としたという自称「科学は短期的な収益性で判断できるものではないということを理解している頭の良い人」が多いようだけれど、一体誰がこのレンホー大先生の質問に的確に答えたか。

否、答えていない。

民主党はわざわざ「国民の生活が第一」と自らのスタンスを明らかにしてくれているのだから、誰にでもわかるような(=論理的な)説明をしないといけない。

仮にも1,000億かけてやる意義を主張するなら、信念と筋の通った説明が必要なはず。

「科学は1位以外意味がない」とかそんなんじゃ分からん。

日本の科学技術の在り方をどのように考えているのか、という上位のビジョンから逆算してスパコン1位の必要性を説くべき。

「1位になれば色んなメリットが後から付いてくる」とかそういう説明にはそれこそ唖然とするので、少なくとも俺(=文系バカ)が納得できるような説明じゃないとダメなんじゃないかと思う。



官僚は仕分け人の質問に回答しこれを説得する必要がある。

一方で、仕分け人は結果について官僚を説得する必要はない。

仕分け人のささくれ立った質問にも丁寧にキチンと回答する官僚は多いが、最後は「良く分からない」的なコメント一言でバッサリ。

何の専門知識もない素人がご僅かな自らの経験・知識に基づき、結果について何ら責任を負うことなく仕分けをするという、恐るべき場が事業仕分け。



ただ、査定をオープンにすることには意義があると思う。

2009年11月6日金曜日

電波オークションは導入すべきか


情報通信制度改革三部作シリーズ「電波オークションは導入すべきか」
というシンポジウムを慶應日吉くんだりまで聴きに行った。メモを残したので、せっかくなのでのっけよう。そうしよう。

通信とか放送とか、あとそれらの政策周りに興味ある人にとってはかなり面白いと思う。
パネリストもかなり豪華。



■パネリスト  
池田信夫 氏 (上武大学大学院 経営管理研究科教授、SBI大学院大学客員教授)
佐々木俊尚 氏(ジャーナリスト)
関口和一 氏 (日本経済新聞社編集委員兼論説委員)
國領二郎 氏 (慶應義塾大学総合政策学部長)
中村伊知哉 氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)
岸博幸 氏  (慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)

■モデレーター
金正勲 氏  (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授)



【各パネリスト 電波オークションへのコメント】
佐々木)
・総務省、経産省ですら政策がどうなっていくかよく分からない。
・i-Japan2015はいったん棚上げになりそう。
・情報通信法は棚上げかと言われたが、現時点では進められるようだ。民主党が程度軌道修正を求めてくるのかという点で、総務省は悩んでいる。
・日本版FCCは白紙で、TFに丸投げ状態。TFはレポートをまとめるのではなく、プロセスそのものを政策立案に盛り込む方式。
・民主党は従来の総務省の委員会を一旦バラバラにして、違うメンバーで新しい議論をしたいという意向が強いようだ。ガラガラポンで、メンバーがどうなるかも分からない。従来は役所のシナリオにある程度そっていたが、そうはならなさそうだ。
・電波オークションについては、総務省や大臣の意向がよく分からない。
・電波オークションは世界的に90年代に盛んだった。当時はインフラを持っているということ自体が収益源になった。
・だが、ここ10年で状況は変わった。インフラは儲からなくなり、Google、Amazon等のプラットフォームビジネスが生まれてきている。
・こうした状況で、資金力だけで電波の取得を決めるのは正しいのか。下位レイヤーと上位レイヤーとが融合するほうが発展の可能性があるのではないか。そのためにはオークション以外の第三の選択肢を考え、ベンチャーに電波を開放するほうが良いのではないか。

中村)
・最近、絶対やらないと言いつつもブログを始めた。ついったーでの発言も増やしている。現政権はやばいので、色々発言していかなければならない状況にあると思っている。特に電波に関しては危機感を抱いている。
・情報通信法に関して。デジタルサイネージを産業にしようと、2年前にコンソーシアムを立ち上げ、160社が参加している。
・通信放送のフルIP化を目指しIPDCフォーラムを立ち上げ、現在30社が加盟。地デジの電波をブロードバンド的に利用しようというもので、新聞や雑誌の紙面を配信する実験を考えている。
・オークションはトライアルでやるべき。抵抗は無いのではないか。あるとしたら、入札しなければならない民間企業か。

岸)
・民主党政権下で様々な分野で改悪が進んでいる。酷いのは郵政人事。脱官僚依存とは間逆の方向に進んでいる。
・ICTの分野についてはドラスティックに換わることは無いが、スピード感や優先順位には変化が出てくる。
・個人的には、電波オークションは理論的には賛成。だが現実に適用するのは難しいだろう。
・既に電波を持っている人と持っていなかった人とが同じサービスをする場合、有利不利がある。後者のほうがコストが高く、競争条件が同じではない。そのため、政府がどのように競争に介入するのか、整理が必要。
・電波オークションによって1兆円の税収があるという話があったが、消費税を1%上げれば2.5兆円の税収がある。埋蔵金として使うとすれば、本末転倒。

関口)
・そもそも電波は誰のものか。誰が権限を持って運用することが出来るのか。
・電波が有効に活用されるか否かがポイント。固定から無線へという流れがある。固定は線を引けば無限にあるが、電波は有限。効率的に使うことが大切だが、そこでオークションが必要か否か。
・オークションの方法が問題。
・欧州では、3Gのオークションを各国ごとに行った。3Gは欧州全域で出来なければいけないため、最初にある地域を取ったら、その隣も取らないといけない。こうした連鎖の結果、破綻した。つまり、欧州は全域まとめてオークションにかければよかった。
・オークションを使えば、無駄に使っている人を追い出せるのか。
・電波料は国庫に入らず総務省に入る。有効にICTの発展に使われるならよいが、オークションのお金が異なる事業体に使われるのも好ましくない。
・電波をデジタル化で圧縮して半分にして使いましょう、というのが98年以降の議論。電波はもっと無駄に使われているものもある。電波資源のデジタル化に手を付けず、放送波の議論が主になっていた。

國領)
・民主政権では方法の話が先に立ってしまっているが、何を実現したいのか意識合わせすることが必要。
・電波で求められているのは果たして効率性なのか。大事なのは創造性である。新しい試みにどうチャンスを与えるのか。効率性を多少犠牲にしても、柔軟性と創造性を重視したい。
・大きな文脈で考えると、国の政策や資源配分を誰がどういうプロセスで決めていくのか、ということ。そのプロセスに対して、大学側から提言できればという狙いもあってこの議論を立ち上げた。
・オープンな議論で制度設計をするにしても、根っこのところでどこに根本思想を置くべきか、というのは非常に重要。その意味では、これまではレイヤー3に競争を入れるという事で政策が作られてきた。果たして今後もそれでいいのか。電波が中心になれば変わらざるを得ない。



【ディスカッション】
金)
・パネラーの皆さんは電波オークション自体には賛成だと思うが、日本でオークションを導入した際、日本の電波産業の強化に繋がるのか?

池田)
・オークションをどうやるか、に依存する。
・日本では730-770MHzしかオークションの対象にならない。やるならもっと大きな帯域でやるべき。その意味では、ITSであそこの帯域とる必要があるのか?700MHZの一番良い帯域になぜ入ってくるのか。奥田会長が入れたのかもしれないが、ITSの技術はトヨタと日立しか持っていない。
・ちょっと上にはFPUという帯域が余っており、誰も知らない。

関口)
・新規事業者が自由にやれる電波が必要だ。日本には、新規参入者に速やかに電波を割り当てられる仕組みが必要。

岸)
・確かにITSへの割り当ては、不思議だ。
・電波を使った競争的な産業がはたして生まれるのか。新規産業育成の面では、オークションだけではダメ。
・オークションで得た財源を技術開発に使うという話があったが、それでは特定財源化してしまい問題がある。
・自動車技術は各社の互換性がない。技術がバラバラなため、世界で全く通用しない技術しか出てこない可能性がある。

中村)
・オークションにすると利用効率が上がる。ここはITSでないとダメという割り当ては破綻している。利用目的の緩和をしないと産業発展に結びつかない。
・オークションの議論で一番重要なのは、誰がオークションを望むのか、ということ。オークションに反対する業界もある。実現してほしいのは誰なのか。その人はどれ位コストとリスクを取るのか、という点が大切。

國領)
・池田さんに質問だが、オークションは上手く設計できるのか。経験則だけでは危ういので、理論がほしい。欧州の失敗が頭にある人が多いが、当時から時代も進んでいるし、成功例もある。

池田)
・某キャリアの知人は、1兆円は大きすぎるという意見。
・値段を安くする方法は、条件を厳しくすること。
・ベンチャー枠を作る方法もあるが、米国では混乱した。そのため、設計は恣意的にならないようにするべき。例えば、物理層だけを割り当て、上位はMVNO等への開放を義務付ける。

佐々木)
・無線は有限だが、出てくるビジネスは当然ながら無限。最終的な問題は有効な資源の公正利用という点ではない。どんなプラットフォームやレイヤーモデルが生まれるのか考える必要がある。例えばMVNOを義務付け通信インフラとアプリケーションを切り離すと、それでは立ち上がれないビジネスの可能性を摘むかもしれない。垂直統合的なモデルの可能性もある。ビジネスの進化という観点も必要。

池田)
・垂直統合を否定するわけではない。他を排除してはいけない、というルールが必要。
・ホワイトスペースは200MHzもある。ここでインフラを構築することも可能で、そうなればオークションで値段がつかなくなる。
・ホワイトスペースの利用技術について、IEEEで論争が続いているが、そのWGに日本人が参加できていないことが問題。オブザーバはいるが、発言権は無い。

金)
・日本でオークションを導入した際、はたして新規参入者が出て着るのか。
・企業買収という形で電波を得る、第二市場の扱いをどうするか。

池田)
・米国でオークションをしたのは、超競争的ムードがあったからであり、日本では何も起こらないことを恐れている。
・現在でも第二市場は企業買収という形で事実上存在している。あまり知られていないが、NTT(ドコモ?)は買収を繰り返し、電波がかなり余っているという話もある。第二市場を公式のものにすべき。

関口)
・オークションをやるなら、悪意をもった事業者を排除する仕組みが必要。この点、第二市場を認めてしまうと難しい。

國領)
・所有権ではなく、ライセンスという枠なので、年限がある。これまでの議論では所有権として話していたが、この錯覚を仕切りなおさないといけない。

池田)
・原口大臣が、周波数オークションをやると放送局の体力が持たない、などとわけのわからないことを言っていた。これは放送業者の勘違いを受け売りしたのだろう。
・放送免許の更新時にオークションにかけられるという不安があるのだろうが、それは絶対にない。日本の放送局は影響力が強いため、誤解から圧力をかけるのはやめてもらいたい。

佐々木)
・テレビは非常に微妙な局面。今後の動画コンテンツビジネスをどうマネタイズするのか。有料配信は成功していないし、CMもダメ。マネタイズの点のビジョンが無いのが現状。

池田)
・問題なのはホワイトスペース。ここではマイクロソフト、グーグル、モトローラがリードしている。日本がここに活用や技術開発に力を入れなければ、植民地化されてしまう。



【質疑応答】
質問者1)
・間違いを訂正したい。周波数を定期的に見直し、ダメなところからは取り上げる、という議論は5年前からやっていること。このことを踏まえてはなさないと10年前と全く同じ議論になる。パネラーたちは電波政策ビジョンを読まれているのか。
・アナログで空く周波数の利用について、総務省は公募を行った。これ自体は評価できるが、総務省の失敗は、用途と技術を分けなかったこと。

質問者2)
・ITSの委員をしている。ITSはピンポイントで来たので、断り切れなかったという背景がある。
・周波数の問題は国の成長に関わるため、次世代を見極めた上での議論が必要。

佐々木)
・通信と放送が融合に向かっているが、今はほとんどのテレビはネットに繋がっていない。
・「日本は国際化には負けた。これからはいかに外資を防ぐかだ」と言われたことがあるが、ブロードバンドは有線から無線へという流れ。WiMAXやLTEで家電がネットに繋がるようになれば、日本は無線ブロードバンドと家電で国際競争力を作っていけるかもしれない。いろいろな分野で再構築が可能だと期待する。

池田)
・電波の問題は電波の問題だけではない。FTTHと同等のインフラが可能になってきた。次はホワイトスペースでパブリックな無線ブロードバンドが出てくるかもしれない。有線の競争戦略も変わる可能性がある。
・大きなフレームワークの議論をすべきという質問に賛成。電波の緩和だけでなく、大きなIT成長戦略の枠組みの中で電波の活用をすべき。FTTHはNTTに任せ、電波と固定でガンガン競争させるのが良い。

中村)
・新政権に望むことは、融合促進、電波の規制緩和、ソフトパワーの3つ。
・現政権にどこまで頼っていいかわからないので、日本が国際競争力を持って輸出モデルを作れる新産業に対して産学で取り組む。

岸)
・インフラレイヤーはもうそんなに儲からない。儲かるのはプラットフォーム。
・コンテンツは儲からなくなってきたが、プラットフォームと結びつけばやりようはある。
・電波だけ効率的に配分すれば上手くいくとは限らない。プラットフォームを押さえるための競争政策が必要。
・経産省は無責任で、一番嫌いな省庁だ。言うことは気にしない方が良い。

関口)
・電波は関心が高いが、金をかけすぎ。インフラは儲からないのだから、ここの通信費を下げ、アプリケーションやサービスにお金が行くようにすべき。
・固定を考え直す必要もある。例えるなら、固定は公共交通機関で、電波は自家用車。電波を有効活用するため、今まで無線でやってきたものを固定に持っていくことで通信コストを下げられる。

國領)
・日本は実は色々やってきていて、ブロードバンドやワイヤレスといった面白い文化を育ててきた。しかし、今までのモデルだけでいいのかというとそうではない。
・今考えたいのは、オープンワイヤレスのモデルにきちんとチャンスを与えること。固定ブロードバンドも進んでいるし、ワイヤレスも卑下する必要はない。オークションはオープンワイヤレスを実現するための手段の一つ。試しにやってみたらと考えている。
・池田先生のモデルをもっと具体化して、実際にサービスを構築したり、電波を割り振ったりすることをテストベッド的にやることが必要。そういった試みを通して、何を実現したいのか分かりやすく議論することも重要。


おわり。
明日はサーフィンと、余裕があれば早稲田祭に行きます。

2009年11月3日火曜日

多様化の宿命


市場の多様化って言葉は、うん、よく聞くよね。一方、最近よく言われる傾向は商品・企業の一人勝ち。今後この傾向は加速するという見方が大勢のようだ。つまり、全く逆の現象が起きている。うーん、混乱する。

一体どういうことだ?つまりこういうことなんだろう。

まず、市場の多様化ということは分かりやすい。個人が選びうる商品の選択肢はかなり広がりつづけているし、購入の判断材料となる情報もいくらでも手に入るようになっている。

さて、個人が持つ時間は一日24時間と変わらない。でも選択肢は限りなく広がり続けている。そういった場合、人はどう考えるか。おそらく、自分が興味のない分野に関しては、選択に要する労力を最小限にとどめたいと思うだろう。時間という限られたリソースを自分の興味ある分野に振り向けたいと思うだろう。選択肢が広がっているのだから、興味のある分野をマニアックに追求していきたいという考え方をするだろう。

そうした場合にヒットするのが「こだわらない」商品だろうと思う。例えば、ユニクロである。あるいはiPodである。多様化の時代には、「興味のない分野に関する選択に手間はかけたくない。でも、ある程度の水準は保ちたい」という消費者が多くなるのは想像に難くない。こんな消費者には「こだわらない」商品で充分。ちなみに、「こだわらない」は「何でもいい」ではない。「こだわらない」と「何でもいい」、あるいは、「これがいい」と「これでいい」の間の絶妙な部分を狙えた商品が一人勝ちしている。そういうのが今の状況なんじゃないだろうか。

一方、一人勝ち商品以外のものは、どんどん細分化し、マニアックなものになっていくかもしれない。しかしマニアックになっていくと、「こだわらない」層からはどんどん遠い存在になっていく。そうなれば当然市場は小さくなり、存在し続けることが難しくなる。

これは仮説だが、多様化がこういった構造を持っているとしたら、とても危険なことだと思う。

多様化を促進させた大きな要因はITだろう。ITは人の選択肢を増やした。だが、生産性を高めるのもITの大きな役割であり、選択する側の人の能力を高めることにITは貢献できるはずだ。たぶんもう貢献し始めてはいるんだろうけど、ITはもっと利活用されるようにならなきゃいけないんだろうと思う。

2009年11月2日月曜日

子供手当を考える


最近、中国のGDPが日本をそろそろ抜くよーって感じになってプライドがやばくなってきたせいか、あるいは、不況だからそんなこと言ってらんねーってことなのか、「日本って成長はそこそこでよくね?大切なのはこころの豊かさじゃね?」論を最近聞かない。スローフード、とかも全く聞かない。ちょっと前はそんなんばっかだったのに。

つまり、結局日本はどこ目指すの?

これがよく分からないってこと。方向性とかゴールってすごく大事。っていうか便利だよね。ゴール決めちゃえば、やるべきこととやらなくていいことがある程度見えてくるからかな。戦略があってこそ戦術が立てられるんだよね。

先日総務省では「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」(長い名前だやう、ほんたうに)という会議が開かれた。錚々たる面々が参加してこれからのICT政策を考えてこー、って集まったんだけど、内容は単なる放談会。まあ第一回目だから仕方ないってのはあるかもしれないが、このタスクフォースだけでなく、従来からの研究会等でも、政府の目指す方向性が良く分からないから、事務局である官僚もどういう風に会議を進めていいのか分からないの。政治主導って言うけどどこに連れてかれるか全然わからんのだ。

さて、この民主党の方向性云々に関して、自分で言うのもなんだけど、以前俺が書いた文章を今読むとなかなか面白い。子供手当について。一年ちょっと前の文章だけど、こういう論点、今もあまり無いんじゃないかなあ。もちろん当時は民主党が政権取るなんて思ってもなかった。当時の俺の論点は、現在ではもはや使い古されているが、今だ有効な論点――民主党って戦略ないよねーって論点と同義。子供手当も「目的は何なの?」ってところから考えるとこういう批判が成り立つ。以下過去日記より引用。(引用元:http://blog.goo.ne.jp/dassou-net/e/a6e8bb75c3457d31c0a4fadf5c2ff54d)

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はあ・・・なんでこうも親と衝突するんだろう。全力で論理的な弱音を吐きたいけど、後悔しそうなのでやめとく。久しぶりに政治ネタいきます。

ニュースで小沢一郎の代表質問の様子が報じられていて、そこで初めて知ったのだけど、民主党の法案で「子供手当」ってものがあるらしい(http://www.dpj.or.jp/news/?num=12437)。

俺はこの法案を知ってちょっと考えてから、「これまずくね?」と思った。そう思ってネットを一通り巡回してみたけど、今のところ俺のような考え方で「この法案まずい」って言ってる文章は見当たらなかった。だからちょっと書いてみる。

「子供手当」とは、中学校修了までの子どもに一人当たり月額2万6000円支給しますよ、っていう制度だ。特徴は、
(1)支給に必要な費用は全額国庫負担とすること、
(2)出生順位にかかわらず皆同額の手当額とすること
(3)保護者の所得制限を設けていないこと
詳しくは上のリンクを見て頂ければと思う。

まあ子育てしやすい環境を作って少子化の流れに歯止めをかけようっていう目的なんだろう。もちろんかなり斬新な法案なので、賛成意見と同様、反対意見も一通り揃っている。例えば、「正直、毎月2万6000円もらえるくらいで子供産もうとか考えねーよ」、とか、「結局税金から払うわけっしょ?子供いない私ら、割食ってない?しかも国の赤字、大丈夫なの?」とか。これらはもっともな批判で「そうだそうだ!」って言いたいけど、今回はこういう角度からの批判はパス。違う角度から。

俺の懸念は、「この制度って貧困層を量産しちゃうんじゃね」ってものだ。どういうことか。

この「子供手当」導入の民主党の思惑は、「今まで金銭的な理由から子供を持てなかった家庭も子供を産むことができるぜ!少子化是正だぜ!」というものだ。でも、問題なのは手当の支給が「中学校修了まで」ということだ。俺の母親も言っているが、子育てで一番お金がかかるのは義務教育以降。だからたぶん「子供手当」を当てにするような家庭の大半は、子供を高等学校に進学させることができない。そして今の日本の現状では、中卒者の就職状況というのはあまり恵まれておらず、高卒や大卒と比べると、生涯賃金の差は大きく広がる。とすれば、この法案が通って、民主党の思惑どおりの効果が得られたとしたら、貧乏な家庭からは延々と貧困層が再生産され続けるということになる。

一方、ある程度お金のある家庭にとって2万6000円というのは、大したお金ではない。そりゃあ小遣いレベルでは嬉しいだろうけど。少なくとも、この手当てができたからといって子供を増やすとは考えにくい。だから、高校・大学と進んである程度の賃金をもらえる国民の数は増えていかない。

つまり、この手当てはひたすら貧困層を増やすという結果しか生まないのではないだろうか。本末転倒。

だってさ、そもそも人口減が嫌なわけじゃなくて、人口減によって引き起こされる国力の減退が嫌なわけでしょ?確かに人口は増えるのかもしれない(これすら微妙だよね)。でも貧困層ばっかり再生産するようじゃ、「国力を減退させてまで人口減を止めたい!」みたいな法案だよねえ、これは。そんなことまでして無理に人口減を是正しなくていいんじゃないか。むしろ、人口減でも成り立つような社会の構造を模索した方がいい。そういう議論がほとんど出てこない。いや、そんなことじゃなくても、規模を縮小しようっていう発想がない省庁を見直す方がよっぽど効果的なはずだと思うぜ。

さーて、そろそろ大学に行こう。

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引用終わり。

今週末の早稲田祭、行きます。